「何年たっても、おめの隣にいんのは俺だっぺ!」
それは、もう何百年、何千年と聞かされてきた言葉。
それにいつもどおりああそう、と気のない返事を返す。
コイツが突拍子のないことを宣言して、自分がそれを軽くあしらう。
呪いの様に、まるで何かの誓いだとでもいうように繰り返されてきた言葉。
―ばかな男。
ノルウェーは前を歩く男の背中に内心で舌打ちをした。
勝手に親友だと思い込んで、一人で、浮かれて。
人の気持ちを決め付けて疑いもしない。いや、知ろうともしないでいる。
ああなんてみっだぐない奴なんだろうか。
無駄に大きな手に握られた右手が暑苦しい。
けれど抵抗しないのは、そう、ただ間抜けな眼前の男の反応が愉快でたまらないからだ。
「相変わらずおめーは表情が表にでねーな!」
にひゃり。
声の調子で前を歩く男の面がだらしなく笑ったのが容易に想像できて顔を顰める。
(ああ、うざてえこと。)
あきれるくらい変わらないやりとり。光景。そして目の前の男。
街が変わり人が変わり世が変わっても、この背中とその向こうに広がる紅色は何世紀も変わらないままで。その事実さえ疎ましい。
”永久<とわ>に共に”だなんて、
「そんなごと、」
―できやしないくせに。
ぐ、と飲み込んだ言葉はしかし、男に届いていたらしい。
「んん〜なんだっぺ、ノル?」
軽快そうに、楽しそうに。
明るく返しながら、それでも男の視線はかたくなに前を向く。
いつだって、私に見えるのは変わらない背中ばかりだ。
「……なんでもね」
突き出した足は、誰の目にも触れることなく、虚しく空を蹴った。
(―私のことなんて見てもいないくせに!)
FIN.